公告(1項)
ゾンビとは不思議な存在です。死にながら生前の習慣を反復する姿のものがなしさは、資本主義システムの枠内でただひたすらに労働と消費を繰り返すわれわれの姿と重なります。その一方で、次々に生者を喰らい、噛みつき、増殖していく姿のおそろしさは、われわれを否応なく取り込み、必要へと追い立てる資本主義システムのおぞましさが具体として現れてきたかのようです。
墓から蘇り文明社会を破壊し尽くすゾンビは息苦しい社会の〈外部〉を予感させる希望のようにも見えますが、かけがえのない個人を毀損し、群れへの同化を強いるゾンビが象徴するのは〈外部〉を想像することすら絶望的な現代社会の閉塞感そのものでもあります。
日常を生きるうえでは自明とされがちな〈大きな枠組み〉。そうした枠組みを内破しようとする個人の意志と、あらゆる自由意志の余地を塗りつぶすかのように全てをのみこもうとするシステムの運動。ゾンビはこうした相矛盾する性格を、統合するわけでもなく、どちらか一項を優位におくでもなく、そのままに共立させてしまう。
ゾンビは明確なひとつの命題の喩えではなく、お互いに矛盾し対立しつつも両者ともに同じだけの妥当性をもったまま共存しているふたつの命題、二律背反の喩えなのです。
僕たちがゾンビを手がかりに探り当てるものはおそらく、〈大きな枠組み〉にのみこまれないための抵抗の方法ではありえません。見出せるのは、僕たちはすでに〈大きな枠組み〉にのみこまれていていて、なおかつ、まだ〈大きな枠組み〉にのみこまれていないという、相反する現実の相貌でしょう。でもここにはまだ〈外部〉の可能性がかろうじて残されています。僕たちはまだのみこまれていないとうそぶくことはできない。けれども、すでにのみこまれているし、まだのみこまれていない、と言うことはできるかもしれない。ゾンビのように、覚めたしぐさで熱く見て、涙残して笑うこと。
ブックフェア「資本主義(を筆頭にした大きな枠組み)にのみこまれないためのゾンビのすすめ」主催の本屋lighthouse 店主・関口さんと、選書協力者・柿内のふたりで、この世のままならなさを前に頭を抱えながら、自らの日々の葛藤や悩みを吐露しあう会になるのではないかと思います。参加者の皆様も、もしよろしければ自分が対面している〈大きな枠組み〉について教えてください。きっと明快な答えはでませんが、ともに頭を抱えることはできるかもしれません。ギンギラギンにさりげなく。クヨクヨしながら元気いっぱい。そんなゾンビになろうではありませんか。 (柿内正午)
日時:2023年2月23日(木・祝) 12〜14時
場所:本屋lighthouse幕張支店&配信 *イベント終了後から通常営業となります
参加費:店内→2000円/配信(ツイキャス&zoom)→1000円
定員:店内→10名/配信→無制限
*配信(ツイキャス)はアーカイブ視聴が可能です
*みんなで頭を抱えたいので、皆さんの悩みごとや解決策(と思ったもの)を共有してもらえると助かります→books.lighthouse@gmail.comまでどうぞ
*イベント中も発言は遠慮なくどうぞ、ゲストが一方的に語る会ではないので(もちろん聴くだけもOK)