海人の部屋

【第2喰:瓦喰らう風】

【第2喰:瓦喰らう風】
 今日は風が強い日。どうやら台風が近づいてるらしい…一つの家からこんな声が聞こえた。
「お母さん。風がすごく吹いてるね。家、大丈夫かなぁ」
そう言うと、お母さんは
「大丈夫、これは大工だったおじいちゃんが建てたんだよ。きっと大丈夫…」
そう言って、この家族はベッドに入って眠りについた。
「大丈夫かな、心配だな」
俺がそう思った瞬間、ビューと風がだんだんと強くなった。台風が直撃したことが見ただけでもわかる。そこら中の家の瓦が剥がれそうだ。数え切れないほどの草木が中に舞っている。風と共に人々の悲鳴も強くなった。
「母ちゃん!怖いよぉ、助けてぇ」
さっきの家族の家ももう瓦や屋根が剥がれて中が見えているほどだ。
「俺、どうしようもないから。なんかモヤモヤするというか…」
と俺が言うと神の子は答えた。
「うん。わかる。私も人間だった頃は人助けとか嫌だと思ってた。けど…」
言いかけた途端、俺は驚いてこういった。
「え?人間だったときって!?それってどういうこと?」
と動揺しながら神の子に聞いた
「あ、人間だったときに乳がんで死んでしまったんだ。その時に今のお父さんが助けてくれたんだ。その時は君みたいにすごく嬉しくて泣いた。だから、君みたいな悲しんでいる人を助けたいなって」
「そうなんだ。悲しいけどいい話だな。」
と返事した。すると
「そう。人助けとかが嫌いだったんだけどね、助けることって良いことだって気づいてそれから人助けとかし始めて…」
話しの途中でとっさに俺はこう言った。
「うん。すごくいいお話だね。」
そう言うと神の子は泣きながらこう答えた。
「違う!だから、こんな人助けとかできない状況が嫌いなんだって!なんで最後まで聞かないの?」
神の子はそう叫んで消えていなくなった。とりあえず写真を撮った。今の俺らの状況は、種々喰らいだ。
 これからはどうしていこうか、そう考えて台風後の空を見上げた。
[種々喰らいになってしまった2人はこれからどうなってしまうのか…次回お楽しみに!]

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