喪服の宮廷女、翳りを重ねた肌理、世界の同性をほぼマリー・アンジェリクと看做し、同性異性問わず黒魔術をかけ、若さに目が眩み、雨風に晒された時計盤に13という皺を足し加えた現代の生けるカトリーヌ・モンヴォワザンは、縮れた自らの白髪を口の中で結びながら熊手のような餓えた手先でバビロンのタロットを捲り、七つの獣が踏み荒らすように色魔の汗を蠟の如くクロスに溢す。小カルパチア山脈の狂気の名門の伯爵夫人の姑に呪いをかけようとした時にでも豪奢な邸宅から離れた呪術の小屋の丈の高い窓に横切る影が映れば、色欲の罠に嵌ったありとあらゆる物を呪術以上に手馴れた手付きで満足の対象とした。庭園は暗い中世の残像を残しつつ木立の擦れ合う中にそれらは天然の絵画として鑢の肌に油的は浸透しながら死せる糸を引き、不貞の老境で涙ながら命乞いをするジャッカルを陵辱し殺害した。胎児や蛙の粉末や砒素、それから驢馬の屎尿の虚飾の兜を貫き、ついでに絶命したカトリーヌ・ド・メディチのその姿に染料を重ねた。初代アウグストゥスの血縁にあたる女性は良縁にも恵まれ不自由の無い淡いエメラルドの生活を送っていたが、子供の頃の脳性麻痺による歩行の困難と吃音の問題によって緑色の宝石は不吉な樹脂に覆われだした。太陽の下では皇妃、月夜の下では娼婦。原初の欲望を控えた犠牲の女の為に香炉の煙はヴェールで讃え、神聖が篭められた繊麗を鏡の中に横たえるのを許した。私は太陽の夥しい栄華の象徴、煙を吸い込みながら私をみすぼらしくするものを…即ち私よりも老けたディアヌ・ド・ポワチエの結び紐の解けた瞳の弛みに沿って視線を這わせるアンリに審判を下したかった。計略から怖しさを引き抜く為に、親政の中ジョコモの誘惑に負け秘密の結婚をしたフォルリに於けるカテリーナやシュライエルマッハーの言う最高の記号、精神の崇高な直感、白い麦を治めるトリフィナの父王を驚かすコルヌアーユの使節が白を黒に変えるように、秋空が吹奏する宮殿の空を赤く染めたエリザベートの刺された心臓を思うのだった……