海人の部屋

【第1喰:陽喰らう雲】

【第1喰:陽喰らう雲】
 「ねぇ、刹那。ちょっと私、見つけちゃったな…種々くらい。」
と言いながら神の子が後ろで手を組みながら姿を表した。
「えぇ!?」
と思わず声を上げた。美人で口調とはかけ離れた顔立ちに驚いた。
「え、そんなにびっくりしないでよ。こっちがびっくりしちゃうな…」
とニコッと笑った。俺はニヤけてしまうのを必死にこらえた。俺の通う中学校にもいないような美人だ。少し姉ちゃんに似ていた。実は姉ちゃんを小学生の頃になくしている俺にとって、なにか思い出すような感じがした。
「あの、実は小さい頃に姉ちゃんをなくして。あの、その姉ちゃんに似てるなって思ってあ、ごめんなさい悲しい話とかして。」
「なんかその話聞きたいな。良ければもっと詳しく教えて欲しいな。」
と君が言った瞬間嬉しくて少し涙がこぼれた。
「うん。こういう風に…話聞いてくれる人いなくってさ、すごく嬉しい。」
というと神の子がこう言った。
「うんうん。泣かないで…ゆっくりでいいんだよ。」
とだんだん口調が優しく、ゆっくりに話してくれる神の子を前に涙がいっぱいに溢れ出た。涙を袖で拭いて丁寧に話した
「実は、俺が小学生の頃、交通事故で姉ちゃんがトラックにはねられて死んでしまって…それから車やトラックとか乗り物が苦手で、すごく車とか気をつけてた。でもこうやって不注意で車にはねられてしまって、中学にも行けないし。これからどうしようと思ってた。こんなときに君に出会えて良かったな…」
今になって感情が溢れ出た。涙も止まらない。
「そうなんだ。それは悲しいなぁ、でも大丈夫だよ。安心していいよ。必ず刹那を生きて人間に戻すから。」
 俺はこのとき初めて生きていることのありがたみが分かった。2人は夕方の空を見上げた。雲が赤い太陽にかかっていた。
「今日の種々喰らいはこれで決まりだね。」
と神の子がいうと、写真を撮った。
「種々喰らいは案外どこにでもいるもんだな」
「うん、そうだね。」
2人は夕焼けを見て笑った。
[種々くらい探しがいよいよ始まったよ!次回、お楽しみに。]

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